えずくぞ!泣ける映画3選 邦画編

基本的になんでもすぐに泣くタイプの私が横隔膜に泣き癖をつけるほど泣いた邦画3選です。

ネットレンタルや配信等、なにかしら家で観られます。

 

・鈴木家の嘘

ある日、ひきこもりの兄が自殺。それを見た母は意識と少しの記憶を失い入院。しばらくして意識を取り戻した母に、家族は「兄は引きこもりを脱してアルゼンチンで働いている」と嘘をつく。そこから家族ぐるみで母に兄の死を悟られないようにするが……という話。

本作はコメディタッチの映画であり、設定の突飛さも相まって、かなり可笑しくて笑える作品である。しかし、身内の突然の死を受け入れきれない家族一人一人が、少しずつ死を受け入れてゆく様をとても丁寧に描いていて、側から見れば滑稽な状況も、本人たちにとっては大真面目であって、死というものに本人たちなりに向き合い、理解するために必要な過程なんだろうな、と思わされる。

父親役の岸部一徳が良い。テーマが少し重なるところもあって『俺の屍を越えてゆけ』シリーズのCMを思い出す。これはかなり良いCMなので、今作と併せて是非観ていただきたい。

扱うのが難しいであろう重いテーマを絶妙なバランス感覚で描けているのは、やはり監督の実体験が元となっているからだろうか。観終わった後はとても爽やかな気持ちになる、とてもいい映画だ。

 

・Every Day

 主演の永野宗典が好きで、何とはなしに観てみたらとんでもなく食らってしまった1本。

事故で昏睡状態のはずの恋人が突然目の前に現れ「1週間時間をもらった」と主人公に告げ、いつものようにお弁当を渡してくる。その状況に困惑しながらも、主人公はその1週間を過ごす。という話。

日常のふとした言葉のやり取りや、周りにいる人の大切さを、そっと教えてくれる作品。内容はよくあるようなものだが、淡々とタイムリミット(のようなもの)を過ごしていく様子に涙腺を刺激される。

「ちゃんとお別れしないと、また会えないですから。」という台詞がここまで沁みる作品はそう無いと思う。

"あたりまえ"をあたりまえと考えてしまう我々に、あたりまえの幸せさを思い出させてくれる。ラストシーンは心がちぎれそうになってしまうが、とても強い気持ちを受け取ることができる。観てほしい!

 

・走れ、絶望に追いつかれない速さで

私が初めて観た中川龍太郎監督作品、また、監督を大好きになるきっかけとなった作品。

 一緒に上京して同居までしていた親友が突然自殺した。親友が最期に描いた絵のモデルの女性に彼の死を告げるべく、彼女のもとへ向かう、という話。

なんといっても、この映画には映画界に残るべき食事シーンがある。人がご飯を食べているだけなのに、こんなにも心に迫ることができるのか……と思わされる。どんなにつらいことがあったって、悲しいかなお腹はすくし、食べないと死ぬ。生きることは食べることなんだなぁ、と改めて実感する。

親友が居なくなってしまった後、親友の生きた輪郭をなぞることで、たしかにここにいた、ということをしっかりと認識してゆくのを、丁寧にひとつずつ描いていて、どん詰まりで真っ暗だった主人公がだんだんと光を見出し、最後は希望にあふれた着地をする。やさしい勇気とあたたかな気持ちをくれる、とても美しい作品だ。

 

厳選して3本選んだつもりだったけど、ぜんぶ「死と向き合い受け入れる」というテーマだった。あとは監督の実体験が元になっているものが多かった。私はこれらに弱いんだな、と思った。