今月観た映画

日々お疲れ様です。今月劇場で観た映画の感想です。

 

・レイニーデイ・イン・ニューヨーク

ウディ・アレンの最新作。ティモシー・シャラメエル・ファニングのダブル主演。画が最高。エル・ファニングってなんでこんなに魅力的なんだ。

しかしなんだろう、全体的に古い!もう84歳にもなるし仕方ないのかもしれないけど、とにかく古く感じた。古い価値観のもと話が展開していき、衣装がトラッドなのも相まって時代設定が古い作品なのか?とすら思えてくる。しかし思い切りスマホを使っているので、着信音がするたびに「ああこれ現代だった」と思い出す。

ウディ・アレン周りもあまり良い話を聞かないので、エル・ファニングのスカートがやけに短かったり、挙げ句の果てに脱いだりするのも変に考えてしまう。

決して悪い出来ではないけれど、私はあまりノれなかった。ただ演者がみんな良かったので観られた。エル・ファニングはすごい。シャラメはずっと八の字眉だった。

 

・透明人間

現代に透明人間が現れたら、こんなにも陰湿になるのか……と、史上最悪の「見えぬけれどもあるんだよ、見えぬものでもあるんだよ。」が体感できる一本。鈴も小鳥も金子みすゞもびっくりだ。

視点を被害者側に徹底することで、こういうホラーで多用される「あれ?これ主人公が狂ってるんじゃない?」を最初からやるという潔さ。オープニングの何も語らずにただ逃げるシーンから始まるのは、これからどういう展開になっていくのかが気になり、とても良かった。

しかし最初から最後までとにかく「ダサい!」と思ってしまった。タイトルクレジットがダサかった。一度ダサいと思ってしまったら、もうダサさが気になるようになってしまい、全然ノれなかった。全編に監督のドヤ顔が浮かんでしまってダメだった。

変な画角のカットやパンした先に何もない演出なども良かったが、いかんせんしつこい。どんなに良い演出でも、しつこさを感じたら良さは失われてしまう。

また、画面ではずっと何かが起こっているが、物語的には何も進んでいなかったり、全体的に怠かった。怠くてダサい。文字にすると酷いことを言っている。出来は良いのですが……。ジャンル映画があまり得意ではないからこうなってしまうのだろうか……。

ガスライティング」という言葉をはじめて知った。ので観てよかった。学び。

 

WAVES/ウェイブス

監督の前作『イット・カムズ・アット・ナイト』が大好きだったので絶対に観たかった作品。

「全編を名曲が彩るプレイリストムービー!」などと言われているが、そんな甘っちょろい内容ではなく、あまりに辛く悲しいストーリー。セリフを排し、音と光とまなざしで語っていく登場人物の心情。

厳格なカトリック教徒の父に育てられ、高校ではスパルタでレスリングをやり、鎮痛剤を飲みすぎたせいでモルヒネ中毒みたいな状態になってしまい……と、主人公がどんどんと追い詰められていく様が見事に描かれている。しかし追い詰めた側も果たしてそれは悪だったのか?何が正解だったのか?そして周りにいた人たちはその後どうすればいいのか?肌の色とは?宗教とは?罪とは?愛とは?赦しとは?など、さまざまな問題に対してクエスチョンを突きつけている。そしてこの映画を見届けた時、寄せては返す、まさに「波」の構造に涙が流れることだろう。

『mommy/マミー』『ルーム』『ムーンライト』をごちゃ混ぜにしたというか、なんというか、とにかくすごいのだ。作品を語るときに他作品をこんなに出すのはダサいけど、とにかくすごいとしか言いようがないのだ。語尾がハム太郎になってしまうくらいすごいのだ。『クリシャ』も早く観たいのだ。くしくし。へけっ。

パンフがレコードサイズでかなり大きくてびっくりした。

 

・アルプススタンドのはしの方

素晴らしい!めちゃくちゃ面白い!高校演劇戯曲原作のワンシチュエーション青春映画。青春を勝てなかった奴らの救いの物語。

甲子園一回戦の応援に強制参加させられ青春の"はしの方"に追いやられた高校生たちが、それぞれの想いをアルプススタンドの"はしの方"から昇華していく。

「悔しい」経験をすること自体が青春なのかもしれないね、でも「悔しい」思いをしたことがあるだけで大勝利!進研ゼミが青春のロールモデルじゃない!お〜いお茶は美味しい!塩分はとっておくべき!黒豆茶は健康にも友情にも良い!予防接種はしとくべき!好きという感情は強い!全ての出来事が高校生の小さな世界の中で起こっているのに、なんでこんなに涙が止まらないんだろう。

「野球部ってだけで自動的に嫌い!」と言われていた野球部は、劇中一度も画面に映らない。よって自分の高校の野球部を勝手に当てはめて観ることになる。私も野球部嫌いだったけど、あれは憧れから来てたある種の嫉妬のようなものだったんだろうな、実際羨ましさもちょっとあったもんな、というように自分の高校時代すら救われてしまった。拍手もした。これは「坊や、どんなにツライことがあっても、負けちゃダメだよ。」映画だ!DQ6だ!甲子園のない夏という異常事態を優しく包み込んで逆転ホームランで場外までぶっ飛ばしてくれるような一本。こういう真っ直ぐさ、今の時代に一番必要だよ!ベスト級に好き!全国の高校生、がんばれ!

そして私の最近気になる平井珠生がとてもいい役で出ていた……。ペットっぽいね、ああいう人ペットやるね……。最高だよたまちゃん……。

パンフレットのボリュームが半端ないので買うべし。

 

・ドロステのはてで僕ら

ヨーロッパ企画!この世で一番小さい規模で展開するSFをやらせたら日本一のヨーロッパ企画

全編OSMO撮影なのもすごいけど、やっぱり脚本の強さ!『コワすぎ!』の花子さん回をこねくり回して邪気を祓ったら『ドロステ』が出来上がる!スパンの短い答え合わせをどんどんしていくテンポの良さと痛快さが心地よい。

ヨーロッパ企画の俳優さんが全員好きなので、もはや親戚がスクリーンに写っている感すらあった。土佐さん永野さん大好きです。これは分かる人には分かると思いますが、中川さんがドスを持って出てきたところ面白すぎた。

2分後の未来が見えるという時間の絶妙さ、2分前の天国と2分後の地獄、どちらも知っている現在の苦悩、しかし悩んでる暇もなく過ぎていく2分!もう訳がわからない!脳みそフル回転!時間オタクの作った時間フェチムービー!時間に殴られろ!

劇場で観られてよかった!みなさんも観るんだったら是非劇場で!

 

・ステップ

山田孝之が普通のお父さんの役をやっている重松清原作の日本映画。いかにもな日本映画。

死を「乗り越える」のではなく、死を「抱きかかえて生きてゆく」のであって、悲しみや辛さは消えないけど、そこから得られるものもたくさんある。その時に周りにいる人たちの大切さや尊さをうまく描いていた。「その時に抱きとめてくれるひとがいますか」です。違うけど。

保育園時代は保育園のシーンがたくさん出てくるのに、小学校に上がった瞬間から学校行事以外の学校シーンがほとんど出なくなったところが良かった。小学校は親から離れていくためのものという考えが私にかなりあるので、父親目線に終始しているだけで実際そんな意図はないのかもしれないけど、だよね!と思った。

「人を見ていちいち感動しないでよ、成長しづらい」という名言が飛び出したり、夏のグレーディングが良かったり、國村隼が良かったり、出てきた病院がおそらく私の祖父が最後に入院した病院だったり、いろいろ思い出すところはあるが、なんとなく感想がない、というのが正直なところ。良い映画だよ!良い映画なんだけど、よく出来すぎていて「良かった」以外の余地がない感じ。ウェルメイドってやつですか。

伊藤沙莉と白鳥玉季がとても良い。伊藤沙莉は昔から最高だけど、白鳥玉季は最近よく出るね。めちゃくちゃ可愛いしめちゃくちゃ演技も良いので是非。けろ先生が担任になってほしい。

 

・君が世界のはじまり

松本穂香が好きです宣言。これは令和の『blue』だ!

ある殺人事件をスタートに、大阪郊外で鬱屈とした生活を送る高校生たちを描いている。自分だけがつらいと思っているけど、周りのみんなも同じように苦しんでいて、しかしつらさの共有なんてできないし、というこのどうしようもなさ!みんなが精一杯ふわふわと生きている。その感情がいつ爆発する(してしまう)のか、というある種の危うさが観ている観客にもひたひたと迫ってくる。ラストのタイトルの出し方の良さよ!英題ずるい!

syrup16gブルーハーツに出会ってドレスコーズになる、みたいなことを勝手に考えたりしていた。そしてニトロデイ。私も高校生の頃にバンド界隈の末席を汚していたので、やっぱりすごく憧れるというか、シンプルにすごいなぁ、って思う。小室ぺい君の演技とても良かった。

テアトル新宿で観たのですが、あそこやっぱり好きだなぁ。観終わった後に地下から地上に上がって急に世界が明るくなる感じが、なんか「生まれ変わりました!よろしくお願いします」みたいな気持ちになる。シネスイッチ銀座もおなじ。

 

今月はちょっと忙しかった。延期していた映画がギュッと詰まっていたせいで、わりと1本1本の上映期間が短い?見逃した映画もちょこちょこあって悲しい。しかし面白い邦画がたくさんあったというか、舞台演劇の凄みを感じた月だった。そして高校生の頃に引き戻されたような月だった。高校の頃の演劇部の人たち、みんな元気かなぁ。ブルーハーツと高校生ってやっぱり相性いいんだね。

様々な娯楽ができなくなっている中で、映画だけは細々と続けられているのが唯一の救いというか、映画好きでよかったな、って思う。これは信憑性ゼロだけど、映画館で映画を観るのって、今のご時世で一番安全な娯楽だと思う。換気してるし、話さないし、席離れてるし、検温してるし、みんなわりとひとりで来てるし。

「映画館に行こう!」のCM見るとニューシネマパラダイス状態になっていつも泣きそうになってしまう。ちょろいね。

みなさんはどうですか、元気でやってますか、元気じゃなくてもいいのでいつか絶対遊びましょうね。