今月観た映画
涼しくなりましたね。うれしいです。
今月劇場で観た映画の感想です。
・僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46
アイドルドキュメンタリー映画にハズレなし。欅坂46の怒涛の5年間、そしてその中心で常に生きつづけた平手友梨奈という一人の少女を追ったドキュメンタリー。
映画自体の構成は、既に脱退した平手友梨奈を今いるメンバーの証言により輪郭を際立たせていく形になっている。これって『桐島、部活やめるってよ』だ!
絶対的センターの平手友梨奈、それに依存してしまう(させられてしまう)周りのメンバー。そこからの脱却は既にできないところまで行ってしまっているが、ファンが求めているものはまさにそれであるが故、今更辞めることもできずに全員の精神だけがボロボロになっていく様をありありと見せつけられる。
直前まで泣き喚いて嫌だ嫌だと叫んでいた少女が大人たちにステージ上に押し上げられると、人が変わったようにパフォーマンスをする。その(身も蓋もない言い方をすれば)大人が子供を消耗させてお金を稼ぐシステムの悪意なき加害性に対して、大人はどう責任を取るべきなのか?というテーマがこの作品には明確に掲げられている。現に監督が作中のインタビューでその質問を出演者にぶつけている。
欅坂46は常に自己批判性をもったグループであって、これはその自己批判のもう1ステージ先を観せているな、と思った。
私が欅坂46のファンだということを抜きにしても、とても良い作品だと思う。私はファンなので、ファーストカットの卒業したメンバーも含めた全員の名前がバーって出たところで泣いた。欅坂46を全く知らない人も、曲だけ聴いたことある人も、みんな観て!
・mid90s ミッドナインティーズ
救いだ!ジョナ・ヒルの監督デビュー作をA24が手がけた傑作。個人的な記憶と結びつきすぎてしまってずっと泣いていた。
私の地元は海岸沿い(住所に"海岸"って付くくらい海岸沿い)で、サーフィンやるかスケボーやるか、みたいな土地だったので、いわゆるああいう風景は結構日常的に見ていて、私はそういう人たちをちっちゃいコンデジで撮影して遊んでいたので、まんまフォースグレードでした。私は5年生だったけど。
また兄/姉への憧れや、ちょっと歳上の友達のあの感じ、かかるサントラも私が小〜中学生のころに聴いていたものばかりで、郷愁しかないような、とにかく刺さりまくってしまった。カルチャーを好きになり始める時の、あのなんでも面白いごちゃ混ぜ感、一番楽しい時期のあの感じがしっかりと描かれていた。新しいものに触れる時って大体兄/姉からだよね。
そしてあの終わらせ方!物語の着地も、ラストの演出も、完璧だ!
画面サイズも4:3で最高。4:3が一番好き。4:3が一番良いと思っている。始まりのA24のロゴもめちゃくちゃ可愛くて大好き。
90年代に青春なんて送ってなかったけど、80-90年代カルチャーにどっぷりだった今までの人生に答えを与えてくれたような、到達点のような作品でした。パンフの装丁がめちゃくちゃ最高。スケーターマガジンみたいになっててめちゃくちゃ可愛いです。ファックシットです。
それにしてもジョナ・ヒル痩せたね、普通のイケメン俳優みたいというか、イケメン監督になってた。妹も活躍してて、いいね。
・チィファの手紙
今年の頭に公開された岩井俊二の『ラストレター』の中国版。日本版『ラストレター』も鑑賞済みだったので比較しながら観た。
『ラストレター』は「執着」や「妄想」のような人間のどちらかと言えばドロドロしたものを綺麗に描いていて変態っぽかったが、今作は「人生」や「死」についての話になっていた。内容はもちろんセリフまでほぼ一緒なのに、エピソードを出す順番や演技によってここまでテーマを変えられるのはすごい。
ただやはり弟のパートはすこしくどいというか説教くさくなってしまったかな、と思った。あとは登場人物がみんなわりと感情をストレートに出していて、そこはやはりお国柄みたいなものもあるのかな、なんて思ったり。
舞台が冬になっていて、やはり夏か冬かと言われたら私は冬の人間なんだな、と思わされた。冬の景色や服装は最高です。建築もとても素敵で、小旅行気分も味わえた。
そしてなんといっても『ラストレター』における森七菜ポジのチャン・ズーフォンが可愛すぎる……。あのおどおど感と落ち着きのなさ、神妙な雰囲気の時の表情、天才だ!後で調べたら金馬にノミネートされていて納得。
・マティアス&マキシム
グザヴィエ・ドランの最新作。ドランはやっぱりかっこいい。
ドランが『君の名前で僕を呼んで』を撮ったらこうなる!ということなので観た。ドランは『たかが世界の終わり』から入りました。
まず登場人物たちのキャラが良い。一人一人がとてもキャラ立ちしていて入り込みやすい。特にあの友達グループが最高。
作中のマティアスとマキシムの関係に近いような感情には私自身も心当たりがあるし、言ってしまえば強い友情と恋愛感情の線引きというか枠が分からなくなることって誰しもが体験したことあると思う。
今作はフィリアがエロースに変わっていく作品だと私は感じた。それは友達グループで遊びまくってるシーンがかなり多いからであって、『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』っぽいな!と思っていたらドランも意識してたらしく、納得。
構図が美しくてずっと観ていられる。キスシーンから少しだけ画面サイズと質感が変わるのも素敵。画面サイズ変えるの完全に流行ったね。ドランが流行を作った……。
・鵞鳥湖の夜
私の大好きな『藍色夏恋』で主演を務めていたグイ・ルンメイが素敵なファムファタールになって……という感じです。フィルムノワール一直線な作品。
先に書いたようにフィルムノワール一直線な作品なので話自体はすごく単純で、その分映像のかっこよさや構図の決まり方に注目できる。
ピンク色に染まる部屋、光る靴、首の飛ぶトンネル、血を受ける傘、そのすべてが美しかった。
間延びをするギリギリで撃たれる銃や、明らかに音量の大きいエキセントリックな音楽が、作品にメリハリをつけていた。
しかし今作はとにかくグイ・ルンメイが美しい。劇中ずっとグイ・ルンメイを観ていられる幸せというものが確かにそこにあった。
それにしても、何故ファムファタールは赤い服を着るのか……。
・蒲田前奏曲
新進気鋭の監督4人が描く、女優・蒲田マチ子をめぐる4つのオムニバスストーリー。私は中川龍太郎監督と古川琴音が大好きなので観た。
中川監督は初期作品を彷彿とさせる音楽使いやカメラワーク。ポエティックな台詞回しには詩人としての中川龍太郎を感じさせられた。
そしてなんといっても古川琴音がかわいい。レトロな風景が残る蒲田にレトロ調の良く似合う古川琴音がよく映える。エアホッケーしてるところのかわいさよ。
中川監督作品めがけて観に行ってしまったが、その他の作品もとても良かった。2本目は行ったことのある蒲田温泉が出てきたり、伊藤沙莉の演技が光っていたり。3本目のセクハラ被害の開示を迫ること自体がセクハラっぽいという構造には、前々から感じていたことを改めて思いだしたり。二ノ宮隆太郎監督が良い味を出している。4本目は渡辺紘文監督全開。それまでの空気と一転して会場がシュールな笑いに包まれていた。おそらくこれが賛否両論というか、好き嫌いの一番激しく出るところというか、その点においてりこさんはどう思われますか?という感じです。私は大好き。
今月はドタバタで観そびれた作品もちらほら。TENETとかね。観るんだったらIMAXGT!とか言ってたら観逃し続けています。早く観なきゃ。でも無事に自主制作の撮影も終わって本当に良かった。出演していただいた演者さんの紹介で現場でお手伝いまでさせていただいて、目まぐるしい毎日ですが、暗いことを考える暇もないのでとてもありがたいです。今月は会いたかった人々にもたくさん会えてよかった。みんなまた会ってね〜。