今年観た映画 個人的ベスト13

今年はいろいろなことがありました。いろいろなことがあった2020年に劇場で観た、公開になった映画をランキング形式でご紹介します。ランキング形式ですが、実際は全部1位です。本当は話したい映画が28本ありましたが、さすがにそれは多すぎるということで頑張って13本まで絞りました。中途半端な数ですが、どう頑張っても13本が限界でした。お暇なら。

ちなみに核心には触れませんが、少し踏み込んだことも書くので、ネタバレを気にする方はお気をつけて。

 

劇場で観たもの

・ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!

ティーンスピリット

・ラストレター

・リチャード・ジュエル

ジョジョ・ラビット

・パラサイト 半地下の家族

・his

・mellow

・9人の翻訳家 囚われたベストセラー

・1917

・アントラム 史上最も呪われた映画

T-34 レジェンド・オブ・ウォー ダイナミック完全版

・ミッドサマー

・恋恋豆花

・ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ

・架空OL日記

・ジョン・F・ドノヴァンの死と生

・弥生、三月 -君を愛した30年-

・コロンバス

・ライト・オブ・マイ・ライフ

・デッド・ドント・ダイ

・ルース・エドガー

・凱里ブルース

・悲しみより、もっと悲しい物語

・スウィング・キッズ

・燕 Yan

・ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語

・はちどり

ゲド戦記

・ワンダーウォール 劇場版

・レイニーデイ・イン・ニューヨーク

・透明人間

WAVES/ウェイブス

・アルプススタンドのはしの方

・ドロステのはてで僕ら

・ステップ

・君が世界のはじまり

・僕の好きな女の子

・ディック・ロングはなぜ死んだのか?

思い、思われ、ふり、ふられ (実写版)

・ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

・ソワレ

・僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

・mid90s ミッドナインディーズ

・チィファの手紙

・マティアス&マキシム

・鵞鳥湖の夜

・蒲田前奏曲

・フェアウェル

・TENET テネット

・ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

・異端の鳥

・星の子

・遺灰との旅 (日本未公開)

・アンダードッグ 前編

・アンダードッグ 後編

ジオラマボーイ・パノラマガール

・彼女は夢で踊る

・罪の声

ホモ・サピエンスの涙

・佐々木、イン、マイマイ

・燃ゆる女の肖像

・私をくいとめて

 

配信で観たもの

・ホース・ガール

・37セカンズ

・その住人たちは

・ハーフ・オブ・イット 面白いのはこれから

・最高に素晴らしいこと

・バニシング

・劇場

・もう終わりにしよう。

・ヴァスト・オブ・ナイト

・そこにいた男

・幸せへのまわり道

・ブルータル・ジャスティ

 

以上75本

 

第13位

『罪の声』

邦画のミステリ/サスペンスは特有のダサさというか、なんとなく落ちつかないあの感じがあってノットフォーミーだと思っていたのだけど、今作にはそれがとても少なくて、これからこういう邦画ミステリ/サスペンスが主流になっていくのでは!という未来が見えた。

また、2時間半という長さなのに中弛みがなく、ひとつのネタで最後までしっかりと描ききっていた点は素晴らしいと思った。

そしてなんと言っても宇野祥平。素晴らしすぎる演技、凄まじい存在感、彼が出てきた瞬間作品の空気がガラッと変わった。完全にギアチェンジした。この作品の素晴らしさの半分くらいは担っているのではないだろうか。とにかく素晴らしい。本当に良かった。


第12位

『アルプススタンドのはしの方』

まず「グラウンドを一切見せない野球映画」という部分がすごい。野球を全くと言っていいほどわからない、ルールすらあやふやな私が観ていても、球場で何が起こっているのかがわかるのは流石としか言いようがない。(野球がわかる人からはダメだったらしいが……)

画面的には情報が少なく、シンプルな展開の中で作品側が伝えたいことをしっかりと伝えている。脚本が上手い。75分という時間も潔くて良い。『ブックスマート〜』とは違い、しっかりと高校生に向けた映画として作っている感じがした。

そして個人的には平井珠生をスクリーンで観ることができた初めての作品という部分でも心に残った。平井珠生は最高……。

 

第11位

『燃ゆる女の肖像』

今月観たばかりなので更なる感想が書きづらいが、とにかく良かった。最近観たバイアスがかかっているだろうと踏んで少し低めにつけたが、本当はもう少し上位かも。

激しい感情を表に出さない視線の演技、そして徹底的に無駄を排した引き算の演出が素晴らしい!こちらに感情を読み解かせる構図の強さも相まって、とても静かな、しかしジェットコースターのような作品に仕上がっている。

そしてラストの畳み掛けがもう!「最後の再会」という言葉から既に最高なのに、実際の最後の再会は、ねぇ!?このラストシーンのためだけでも、いや、このラストシーンのために是が非でも観てほしい!

 

第10位

『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』

中国からとんでもない化け物が現れた……!と観終わった時に思ったのを強く覚えている。絵からストーリーから、全てが美しく幻想的。そして60分ワンカット。どうやって撮っているんだ!カッコつけ感は否めないが、ちゃんとカッコついてるので良し。

やってること自体はデビュー作の『凱里ブルース』と同じだが、再構築してさらに洗練させ、確実にレベルアップしているのでこちらをランクイン。あと最初にこっちを観たから、というのも大きい。

新型コロナウイルスが流行りはじめて3D上映が少なくなってきていたところを、絶対に3Dで観たかったがためにメガネ買い切りのイクスピアリまで行って観た。誰もいない劇場で映画の途中から3Dメガネをかけて夢に落ちてゆく。完全に映画とリンクしてしまった思い出。観終わって劇場を出たらディズニーランドが休園しますと発表していて「地球最後の日」感があったのも印象に残っている。

 

第9位

『ヴァスト・オブ・ナイト』

「何かが空にいる」という不明瞭で気味の悪い謎に「観る」のではなく「語る」「聞く」ことで迫っていくSFスリラー。アプローチの方法に『霊的ボリシェヴィキ』を思い出す。

50年代アメリカの田舎町の「古き良き」感は最高だし、その田舎町全体がバスケットボールの試合に夢中になっている中、謎に迫っていくラジオパーソナリティのおじさんと電話交換手の女子高生という構図がたまらない。怪異はいつだって日常のすぐそばに潜んでいる。

あくまでSFに徹底するストーリーだが、そこには人種やジェンダーなどのテーマがあり、そこの絡め方、そして50年代を描いているからこそのおそらく当時そういう反応だったんだろうな、という登場人物のリアルなリアクションは、現代に繋がってくるものだと思わされた。

 

第8位

『アンダードッグ』

熱すぎる。負ける強さ、戦う理由、勝利のあり方、何かと戦っている人全員に観てほしい。

前後編合わせて約4時間半という長丁場をダレることなくしっかりと1本の作品として徹底したバランス感覚の良さ、前編と後編でがらりと作品のトーンが変わる中、あくまでその底を流れる共通のテーマを描き切った部分は圧巻。

個人的には売れないお笑い芸人、宮木のストーリーに涙が止まらなくなってしまったので、後編より前編の方が好き。前編の終わり方も最高。しかし後編にも宮木は出てきて、宮木が生きている!となった。宮木がんばってくれ!宮木応援してるぞ!セコンドのロバート山本博もたまらない。

とにかく熱く面白く泣ける作品。観るのであったら前後編のイッキ観一択です!

 

第7位

『コロンバス』

 とても個人的な理由になってしまうが、建築が好き、フィックスが好き、長回しが好き、構図バチバチの映画が好き、ベースノイズがよく聞こえる静かな映画が好き、登場人物の少ない作品が好き、誰かの人生の一部を垣間見るような作品が好き、という私の趣味がすべて詰まっていた作品だった。

「好きなものを説明してほしいのではない。なぜあなたがこれを好きなのかを説明してほしい」というセリフには激しく頷いた。とにかくこの映画は私のフェチムービーだったのだ。毎年1本はこういうフェチムービーに出会ってしまい、ランキングに入れざるを得なくなってしまう。

派手な面白さや分かりやすい楽しさは全然ないが、自分の大切な人にこっそり教えて静かに噛みしめたい、そんな作品だった。

 

第6位

『フェアウェル』

 今年のA24作品群の中では一番良かったのでは。余命宣告をされたおばあちゃんに、その事実を嘘で必死で隠し通す家族の姿は、私の大好きな『鈴木家の嘘』を思い出す。

しかし今作がすごかったのはあくまでメインで起こる出来事を結婚にとどめたことだ。ぱっと見は結婚式のために久々に集まった親戚一同なのだ。しかしそこにいるおばあちゃん以外のすべての人に「おばあちゃんの命が短い」という共通認識を持たせるだけで、ここまで事件が起き、ここまで何気ないワンシーンがドラマチックに映るのだ。その物語の進め方にはなるほどな、と思わされた。

A24の好きそうな美しくも眠いような色味と、時々挟まる突飛なギャグが相まって涙が止まらなくなる。後部座席から見える景色はいつだって切ない。

 

第5位

『アントラム 史上最も呪われた映画』

 観たら死ぬ!と言われ、封印された映画を全国上映!という時点で評価すべき作品。ちなみに私が死んでいないのはたまたま運が良かっただけなので、観るときは本当に気を付けてください。

ホラー映画だと思って観に行った人たちに「全然怖くねーじゃん!」と酷評されている今作。それもそのはず、これはホラー映画ではない。映画の皮を被った「オカルト」そのものを体験できるシロモノなのだ。この映画を作った人たちの「殺してやる!」という気概はビンビン伝わってくるし、実際この映画は本当に人を殺す力を持っている。とにかくすごい作品なのだ。

「怖くない」と評判の本編も(怖くはないが)クオリティの高いスリラーになっており、普通に面白く観られる。信じるとは疑ったうえで受け入れること!疑っただけでそれをあざ笑うのは誠実ではないよ!死んじゃうよ!

オカルト好きは是非!オカルトが全然わからない人も是非!

 

第4位

『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

 2020年一発目に観た作品が4位にランクイン。とにかく笑って泣けて熱くなる、最高の映画。世界一下品で汚い『リトル・ミス・サンシャイン』です。

メタルを全然知らない人でもばっちり面白いし、メタルを少しでも知っていればさらにクスッとできる。私はどうしても彼らのバンTが欲しくて直腸陥没BOXを予約購入した。あのアー写がプリントされてるTシャツなんて買うしかないだろ!しかも映画グッズではなく、あくまでインペイルドレクタムのバンTとして作っているところに音楽愛を感じた。

軽く観られる作品かと思いきや、ちゃんと大切なことは伝えきっているし、終わり方も潔い。とにかく観てほしい一本だ。

 

第3位

『僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

アイドルドキュメンタリー映画は基本的にハズレがない。しかしこの作品は他のそれらよりも明らかに一線を画していた。

桐島的立ち位置の不在の中心である平手友梨奈の強さと脆さ、そしてそれに立ち会ってしまった周りの人間たちがボロボロになりバタバタと倒れ、諦め、逃げ、依存する姿を生々しく撮っている。しかし本作のテーマはそれを見せることではなく、アイドルという「人間を商品にする商売」に対する向き合い方を問われている。「子供たちにこういうことをさせて、大人たちはどう責任をとるべきなのでしょうか?」という言葉が作中に何度か出てくる。監督もこのある種の加害性に気付いているのだ。その質問に対して、彼女たちのダンスレッスンをし、いちばん近くにいた人物は「見続けること」と答える。これって全てに繋がってくるのでは?

簡単に好きという事実をひっくり返せるようになってしまった現代で、自分の好きなものに対してどういう姿勢でいるべきなのかを問われる、現代社会のドキュメンタリー。全員観て!

 

第2位

『佐々木、イン、マイマイン』

今年の邦画ではダントツで良かった。正直どんな理由でここまで揺さぶられているのかイマイチわかっていない。しかしとにかく心に深く刺さってしまった。

佐々木コール、バスケ、バッティングセンター、パチンコ、苗村さんとのカラオケ、いつか思い出して懐かしくなる日々の愛おしさがギュッと詰まっていて胸が苦しくなった。「今が一番眠くない」というセリフがそれを突いていると思う。

中でもカラオケが最高。友達は『WOW WAR TONIGHT』を歌ってる中、隣で歌われる『プカプカ』に心惹かれたり、その後に『化粧』を歌う……。なんだよその選曲は〜!とくすぐられまくる。

誰しもの心のひだのどこかに引っかかる傑作だと思う。邦画、まだまだ行けるぞ……!と思わされ、励まされてしまった。ピーキーな作品だけど、とにかく良い。

 

第1位

『ストーリー・オブ・マイライフ/私の若草物語

加点方式で観たらガンガンポイントを稼いでいくし、減点方式で見たらひとつもこぼさない。つまり完璧な映画。文句なしに今年ベスト。

自分の「好き」に正直でいることの大切さ、「好き」が認められない苦しさと叶った時のワクワクなど、「好き」に関する機微がとても繊細に、しかししっかり面白く描かれていた。

私はアートとエンタメは両立できると思っているのだけど、この映画はその両立に(しかもいやらしさがひとつもなく!)成功している。おしゃれなのにアカデミックでかわいくて面白い。それって最高じゃん!

とにかく観て!それだけです!シャラメもピュー子も最高です!おわり!

 

以上です。ランキングをつけているけれど、ランクインしている時点で全部1位なので順位に大きな意味はないです。映画以外のものもさらりと。

 

良かったドラマ

『殺意の道程』

 

良かったマンガ

『水は海に向かって流れる』

 

良かった音楽

AGE FACTORY 『EVERYNIGHT』

 

そんな感じです。

今年は4月5月がボコっと抜け落ちてしまって、それがなかったら100本行ってたのかな〜なんて考えています。そのかわり家でかなり観ました。自粛期間の間に50本映画観たりしてました。暇だったんですね。

色んな人が言っている通り、今年は青春映画が豊作でしたね。様々な青春の形が、青春が奪われてしまった今年に公開になるという小さな奇跡みたいな状況がすこし面白かったりしました。

暗めの1年になるのかな、とも思っていましたが、今年も面白いものたくさんありましたね。来年も面白いものが絶えない世界であってほしい。

映画の感想を書くのは来年も細々と続けていく予定なので、たまに思い出して見てやってください。今年もありがとうございました。