今月観た映画

こんにちは。今月劇場で観た映画の感想です。

 

・僕の好きな女の子

やめてくれ!恋愛モノの映画ではなく、"恋愛すること""人と関係すること"についての映画だった。

個人的な話かつ自分で言うのもあれだが、結局私は他人と関係を築くことが苦手というか、とってもまわりくどい方法しか持っていなくて、すごく単純なことをいろんな言葉で固めて自分で納得させないと気持ち悪くなってしまうタイプで、今作の主人公のそれと完全に重なってしまい、かなり喰らってしまった。改めろって話だし、この文章を読めばあえて言わなくてもわかるだろうけど。

主人公の設定が脚本家であったりすることもあり、私も脚本を書く人間の末席を汚しまくっている身としては、当て書きすることのある種の罪とかも考えてしまった。

私は基本的に又吉の書く小説が苦手で『火花』も『劇場』も本当にダメだったんだけど、又吉の書くエッセイは平気なので意外にすんなり観られた。しかしやはり女の子が女の子像の中にしか存在しない女の子のように感じられてしまい、又吉ってこういう子が好きなんだろうな……と、常に又吉のことを考えてしまう。又吉よ、これは罪だぜ。

あと『劇場』でも思ったんだけど、映像にすることで暴力性が生まれる描写が多い。渡辺大地に仲野太賀をぶつけたらダメだ!もうやめてくれ!モノローグの後があったから良かった(良かった?)ものの!やめてくれ!ウワーッ!

よくわからなくなってしまった。私はこの映画好きです。

 

・ディック・ロングはなぜ死んだのか?

先生に怒られちゃうタイプのA24だ!ネタバレ厳禁!みたいな売り方が良くも悪くも成功している。ネタバレ厳禁と言っときながら、仕掛けがどうこうみたいな話ではないけど、いちおう気をつけながら。

バンド仲間のディックの死の原因をひた隠しにするおじさんたちのドタバタ劇。かっこよく言えばチャップリンの名言が浮かんできそうだけど、ねぇ?

観ている間それなりにハラハラやドキドキもできて面白いんだけど、終わってなにも残らないというか、そりゃそうだよね……みたいな、大人になれなかったおじさんたちが、中学生みたいなバカ騒ぎをひた隠しにしてすったもんだして、みたいな……。「俺たち『ラストサマー』みたいに殺されちゃうのかな」みたいなセリフがあって、これそのまま『ラストサマー』みたいになったら結構面白いかもな、なんて思ったり。

ひさびさにTSUTAYA準新作コーナーみたいな映画だった。ニッケルバックなんて聴いたの中学生以来だよ……。

 

思い、思われ、ふり、ふられ

キラキラ映画を観ずにキラキラ映画を批判するな党宣言をしていたら、キラキラ映画を観ること自体はわりと好きになったりしている。だいたいWOWOW待ちをするけど、今作は時間が合ったので劇場で観た(いわゆるキラキラ系はレイトショーにかかりづらい)。

K-POPグループのティザームービーみたいなオープニングで始まり、わりとベタベタな恋愛モノ。かと思いきや、前半の恋愛を通して描いてきた「自分の気持ちに忠実であること」というテーマを将来の夢と絡めることで、高校生ならではの話になっていて、思っていたよりずっと良かった。

ツッコミどころを探し出せば止まらないけど、だいたいは受け流せる。なぜならキラキラ映画だから!と言ったら失礼だろうか。でもそれってキラキラの強みだと思う。かっこいい人とかわいい人が写って、話も面白くて、流行りの曲かかって、それでいいじゃない。楽しいよ。でも理由なくカズくんのDVDを捨てる両親にはサイコパス性を感じずにはいられなかった。浜辺美波が細すぎて心配になった。福本莉子とてもよかった。

お盆休みも明けて少しは空いてるかな、と思ったら満席だった。世は夏休みだということを忘れていた。こういう映画だとちゃんとポップコーンがこんなに売れるんだなぁ、とか思った。いつも観ている映画の観客との「層」の違いを強く感じた。たぶんこの方が健全。

 

・ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

懐かしさを保ちながらも現代的なストーリー。

ジョナ・ヒルの妹が出てるのもあって、言ってしまえば『スーパーバッド 童貞ウォーズ』の女の子版であって、いわゆる童貞モノの主人公を女の子に置き換えることで、スクールカースト内の息の詰まる感覚や、周りからバカにされることに対してのなにくそ感などをより顕著に出す感じ、去年の『エイス・グレード』の時も思ったけど、全世界的に作られてるというか、メインストリームになったなぁ、と。

内容は基本的に下ネタの応酬でちょっと「うっ」となるところもあったけど、それぞれの成長や他者を認めることを説教くさくなく描いていた。そして結局みんないいやつ。いい人しか出ない映画って基本いいですよ。エンドロールのラストで流れる音楽が良い。いいやつ。

ただ面白いな、とは思ったが、救いの映画だ!とまではいかなかった。私の映画の面白さの基準は「救い>面白い>つまらない」で、この映画は超自己肯定型の救いを描いた作品であって、これも私の勝手に作った基準なんだけど、救いには「自己肯定型の救い」と「自己否定型の救い」のふたつがあって、私は完全に「自己否定型の救い」に感情移入してしまうタイプだから、いわゆる「童貞モノ」に全力で乗れない理由のひとつにそれもあったりして、今回も童貞モノのそれだった。ゴイステ/銀杏にどハマりするかシロップにどハマりするか、みたいな感じです。

アンナプルナは映画も良いけどゲームもとても良いので是非アンナプルナの絡んだゲームをやってみてください。『Sayonara Wild Hearts』をやってみてください。

追記(2021/01/01)

2020ベストを考えていた時に上で書いた「自己肯定型の救い」と「自己否定型の救い」の話をだんだん強く思うようになってきてしまって、あまり好きな作品ではなくなってきてしまった。「その考えもう古いからやめた方が良いよ」という方向性で他者の救いの方法を否定していたな、と思ったり。映画を使って社会に対して何かを主張するのはいいけど、それによって踏み潰されている人間がいる、という部分への配慮をあまり感じなかったかも。じゃあなんで『アルプススタンド〜』をベストに入れてるんだよ……となるかもしれないけど、あれは架空の話だと強く感じられたからというか、変な言い方になるけど作っている側に「社会に対する気持ち」を前面に押し出している感じがなかったからだと思う。作っている側のドヤ顔が浮かばないというか、あくまで主張ではなく作品を作り上げてほしいという私の主張があるので……。

 

・ソワレ

村上虹郎と芋生悠のダブル主演逃避行。タイトルの出方でシビれた。

開始30分でグッと引き込まれ、そこからのヒリついた空気感。村上虹郎は行き場の無い若者をやらせたらいつだってピカイチ。江口のりこはいつだって我々を正しい方向に導いてくれる。

結局こういうのが好きなんだよな、という感じで、もはやちゃんとした評価はできないのかもしれない。フィックス画の美しさと手持ちのブレとのメリハリがしっかりとついていて、わかりやすくも深い物語。私の大好きな『ガルヴェストン』をすこし思い出したり。

基本的に男女ふたりの話は停滞しがちだけど、それを「逃げる」という行為が押し進めてくれるので、わりとテンポも良くスイスイと観られた。フェリー乗り場のシーンはグッとくるものがあった。

ただエピローグはいらなかったんじゃないかなぁ。なんか急に話が閉じちゃった感じがするし、潔さがなくなっちゃった。私は無かったことにしました。

芋生悠、ゆっかーの個人PVで知ったけど、凄く良い女優さんですね。芋生悠の凄みを感じるためだけでも観に行っていいと思う。今作でドカン!と行ってほしい!行ける!行ってくれ!ゴー!

 

 

あまり夏を感じないまま8月が終わりますね。夏っぽいことはひとつもやってません。最近は朝と夜が涼しくなってきて、少しだけ秋の気配を感じますね。

私はというと、毎日プロットを書いては消し、脚本を書いては消し、編集は終わらず、打ち合わせではケンカをし、あとはへらへらしています。時々ゴーストオブツシマをやっています。

そんな中、シネマカメラを手に入れました。すごく重いですが、なんかすごい映像が撮れている!という気持ちになります。まだ使いこなせていません。そしてたぶんこれからも。いつか使いこなせるようになりたいですね。

みなさんはいかがお過ごしですか。私は元気ですよ。みなさんもくれぐれも健やかに!