今月観た映画

真冬になってしまいました。今月劇場で観た映画の感想です。

 

・遺灰との旅

東京国際映画祭で。バラバラだった家族が遺灰を撒くためにオンボロのバンで旅に出るインドコメディ。

フェラーリのバン(?)のチグハグさや家族がそれぞれに抱えている悩みや秘密が、旅が進んでいくにつれて表面化していき、どんどん事件が起こるところはありがちながらも面白く、また突然歌がかかるのもインドっぽくて良かった。というかドランを思い出した。ドランってインド映画だったのか……?

しかし私のロードムービー好きが故に期待値が高くなってしまっていたからか、肩透かし感は否めず。出てきた問題とか、それぞれの想いとかが終盤の事実によって一気にぶち壊されて、ヒュンってなりながら終わってしまった。まあリアルっちゃリアルだが……。もうちょっと映画的飛躍を観たかったかもしれない。ヒュン。

六本木のTOHOで観た。あそこはいつも風が強い。ヒュン。

 

・アンダードッグ 前/後編

救いだ!これも東京国際映画祭で観た。めちゃくちゃ面白いボクシング映画。

「戦う理由」と「負ける強さ」の物語で、私は特に前編のお笑い芸人、宮木にめちゃくちゃ感情移入してしまった。ボロ泣きした。周りに馬鹿にされながら、絶対に負ける試合に全力で負けに行く。その強さですよ!リングの上の人間にしかわからない勝負の勝ち負けではない、自分への勝ち負けに命をかける男たちの物語、最高です。

後編は打って変わってシリアス路線。しかし後編の試合シーンのために今までの3時間半があったな、と思えるほどのこってり感。素晴らしい。

この映画のプロデューサーさんとお話する機会があって、その時に「今これやってるんだけど絶対に面白くなるから」と仰っていたが、本当に面白かった。私はこの映画を観られてよかった。ありがとうございます。贔屓目なしにめちゃくちゃ面白い!前後編一気観がおすすめです。

 

ジオラマボーイ・パノラマガール

岡崎京子がこんなに爽やかにできるのね……。原作のどろっとした部分をだいたい排除して爽やかな素敵ムービーになっていた。最近の青春映画はゆりかもめ沿線ばかりだね。青春という刹那的なものが再開発地域と被って良いのかな。私は豊洲のあたりの景色とかは大好きなのでガンガン使ってほしい。でも電車に乗る時は顔の血ぐらい拭きなさい!真利子哲也か!

90年代の終末思想と2020年の新型コロナ等によるある種の終末思想が変なリンクをして最近90年代リバイバルがされているように感じる。でももうすでに岡崎京子の世界観を現代でやることは辛いんじゃないかな……。成海璃子は若者の鬱屈した気持ちを擬人化したものなのか、というくらい毎回同じような役をやっている気がする。

しかしまあとにかく山田杏奈がかわいい。好きになっちゃうね、それだけでいいんじゃないかな!キラキラ映画としての『ジオラマ〜』、という視点だったら100点です。というかわりと好きな作品でした。

あと私は岡崎京子が好きなんじゃなくて大島弓子萩尾望都レイ・ブラッドベリが好きだから文脈として岡崎京子を摂取している、という感じです。ひねくれ。

 

・彼女は夢で踊る

なんだこの哀愁は!画面の端から端までノスタルジー。社長と共に夢を観た2時間だった。

青春時代を過ごした場所に蓄積する記憶、みんなが帰ってくる場所を守り、愛することの尊さ、人間ってやっぱり捨てたもんじゃないね、という神みたいな感想を持ってしまった。これが日本の『ア・ゴースト・ストーリー』だ!

レディヘの『Creep』が劇中4回かかって、もはや押し売りか!とも思うが、仲間と笑い合った時間や好きだった人との思い出がモンタージュされながらクリープかかったらそれはもう条件反射で泣いちゃうじゃんね。

無くなっていってしまうものを必死に残そうとする社長の姿がこの映画自体と重なって、エンドロールでまた『Creep』でノックアウト。めちゃくちゃ良いエンドロール。音楽つながりでTK from 凛として時雨の『Shinkiro』の「消えていくものたちは見えるのに/目の前にある光さえ見えなくて」という歌詞を思い出した。Charaの気怠く甘い声で歌われてて最高なので是非聴いてみてください。

編集や撮影の荒削り感は否めないものの、その荒削り感がこの作品全体の愛おしさに貢献している、奇跡みたいなバランスの映画でした。良い!


・罪の声

グリ森をモデルにした小説が原作の、邦画ミステリ(サスペンス)新たな金字塔!

邦画ミステリ/サスペンスのあのなんとなく漂う"ダサさ"がちょっと苦手だったりしたんだけど、邦画の武器である「感情の機微」にフォーカスした作りになっていて、これはちょっと新しいというか、新たなステージに行ったな……と思った。

とにかくお金がかかりまくっている。TBSスパークルの映画一発目、実は公開前に広報の方とお話する機会があったのだけど、すごく気合いが入っていたのが印象的だった。でもこれが一発目って大成功なんじゃないか?次回の『花束みたいな恋をした』もめちゃくちゃ楽しみ。

そしてなんといっても後半に出てくるあの人が、ね!みんな大好きなあの人が最高だった。全て持っていった。本当に素晴らしい。何かしら受賞してくれ!お願いだ!

 

ホモ・サピエンスの涙

ロイ・アンダーソンの新作!ロイ・アンダーソンを観てなにかを分かった気になっていたタイプの人間だったのですが、今作はだいぶ分かりやすくて、自分が成長したのか、ロイ・アンダーソンがやさしくなったのか、みたいな感じだった。

やっぱり当たり前だけど、とにかく画が美しい。娘とお誕生日会へ行くシーン、素敵だったなぁ。

いつも通りのすっとび哀愁ギャグもそのままに、突然のシリアスシチュエーションとファンタジーがぐちゃぐちゃになって、夢を見ているみたいな1時間ちょっとだった。まさに「こんな夢を見た」状態。概要には『千夜一夜物語』への言及があったけど、監督は意識したのかな。どちらにせよ『千夜一夜〜』を思い出した作品は『>>> swIming/girrrrrl <<<』以来。どかんどかん。わたしは火山。

 

・佐々木、イン、マイマイ

救いだ!最近よく出てくるこのテイストの作品の中では1番よかったかもしれない。

常にバカをやって周りを盛り上げていた奴が圧倒的な輝きを持ち続けたまま自分の中に存在しているの、結構ある。私は暗めな高校生活だったので、そういう奴を遠くから見ては変な気持ちになっていたタイプだったけど、圧倒的なカリスマ性を持っていた面白い人が大学に進学してどんどんつまらない人間になっていくのを人づてに聞いたりするのが本当に苦しかったので、この作品で私の中の何かが救われたような気もする。

でもきっとこれを10年後に観ても面白くないんだろうなぁ、なんて思ったり。とにかく若い!そしてそれに呼応してしまう私もまだまだ若いことを再確認した。私はまだ若いよ。「世界はえらいスピードで進んでる、ついていかなきゃ、でもさよならも言えないほど速くはないよ」、その通りだよね。だいせんじがけだらなよさ!

あとはあの赤ちゃんは名演でしたね。あのシーンの藤原季節ももちろん名演だったけど。

多幸感に包まれているのに、常に寂しくて、どこか物悲しい、そんな映画だった。佐々木コールはいつまでも止まないよ!

 

 

今月は中旬に思い切り体調を崩して1週間寝込んだりした。みなさんも胃腸炎には気を付けてください。でも今月観た映画は面白いの多くてとても良かった。年末にさしかかって今年のベスト10に波乱が起きた。いよいよ考えていかなくちゃいけないなぁ。

また制作が始まって毎日へろへろです。でもほんのちょっとお仕事ももらえたりして、うれしいこともちょこちょこ。いい感じにサボりながら頑張っていくしかないね。

本当はガヤガヤしたところで毎日のように飲み歩いていたいような気持ちだけど、また感染者数が増えてきていて、なんだか時間をいたずらに過ごさざるを得ないような、けりのつかない感情がぐるぐるしてしまう。でも映画の感想を書くとか、映画制作とか、言うなれば答えのないものに対して自分なりの答えを出す作業ばかりしているから、こんな時世でも脳内はハッキリしている。ような気がする。幸い新しくできた友達もいる。マスクなんてしなくても良い世界で出会っていたら、仲良くなっていたのかな〜、なんてことを考えていた月だった。私は元気です。

みなさんはどうですか。こんなブログを読んでしまうほど暇ですか。理由はどうあれここまで読んでくれてありがとうございました。どうかお元気で。