今月観た映画

すっかり冬ですね。今月観た映画の感想です。

 

・フェアウェル

ずっと観たかった!延期に延期が重なって10月公開になってしまったルル・ワン監督の作品。

祖母の余命宣告を一族総ぐるみで隠す話。やっていること自体は普通の家族モノなのに「祖母が死んでしまうかもしれない」という要素をひとつ入れることでこんなにも愛おしいドラマになる。

構造自体は『鈴木家の嘘』にとても似ているけど、こちらは死の克服ではなく「人はいつか死ぬ」という絶対的な事実に直面しながらも受け入れていく過程をとても丁寧に描いている。

オークワフィナの演技がとにかくすごい。とても複雑な顔をばっちりとしてくれて、観ている側も安心感がある。オークワフィナなら大丈夫だ!って。

言葉のわからない日本人の彼女がずっとニコニコしているだけ、というのが妙なリアル。でもきっとああなるよな〜、なんて思いながら観た。

総じて最高の映画です。欠点がひとつもないです。私はずっと嗚咽するくらい泣いていました。ベスト級です。

 

・TENET

ノーラン最新作。結局みんな観るし私も例に漏れず観に行きました。グランドシネマサンシャインのIMAXGTで観てきました。

みんなが難しい難しい言っていたのでかなり構えて観に行ったが、意外と分かりやすいというか、ノーラン作品の中ではかなりストレートな話だったのでびっくりした。私が哲学科だったからエントロピーとか時の矢とかが最初から入っていたのが要因だろうか。

なにより一番最初に「考えるな、感じろ!」と言われて笑ってしまった。なんて親切……!

内容的にはノーランのベストアルバムみたいな話で、内容的には新しい部分はそこまでないと私は思う。敵役のセイターがめちゃくちゃ反出生主義的な立ち位置でお〜ってなったくらい。

「考えるな、感じろ!」目線で言えば、ボーイングが突っ込んだり、順行と逆行の入り混じる映像やダブル爆破シーンなど、とても目に楽しい映画だった。あとエリザベス・デビッキが美しすぎる。

いろいろ言ったけどめちゃくちゃ面白かったしおすすめです。というかもうみんな観てるよね。

それにしても初めてグランドシネマサンシャインのめちゃくちゃ大きいスクリーンで観たけど、めちゃくちゃスクリーン大きかったな……。めちゃくちゃ大きいスクリーンはめちゃくちゃ大きい、ということを知った……。

 

・ラストブラックマン・イン・サン・フランシスコ

A24、Plan B、オバマ等、何かと話題な1本。

昔住んでいた家に執着(?)する男性の話。重めの題材を取り扱いながらも、美しい構図、色合い、突飛な演出があり、ある意味軽く観られる作品だった。オープニングが最高!スケボーに2人乗りして街を駆け抜ける画に本当にワクワクする。

家や土地、人種の話題が表に出ているが、これは友情の物語だと私は感じた。2人の友情があったからこそ、あの告白ができたし、告白しなければならなかったんだと思う。友情があるからこそ、そのつらい選択をするべきだと決心ができたんだろうな。

とにかくA24っぽい映像でずっと続く話で、でもそのA24っぽい綺麗な映像が、街から浮いてしまっているというか、すごく俯瞰した視点のように見えてしまって切なくなった。綺麗で切ない。それは最高。

 

・異端の鳥

途中退出者続出!という俗な見出しがつけられてしまった作品。もっと厳しい映画なのかと思ったら意外にもエンターテインメントとして観られる映画だった。

モノクロで劇伴もなく、淡々と人間の悪意が続いていく3時間。しかしカットも多くてテンポも良いので意外にもサクサク進んだ。

作品の中で「名前」が何度も出てくる。章のタイトルがその時に保護していた人たちの名前だったり、人間を人間たらしめるものはやはり名前なのだろうか。眠れない夜は誰の名前も呼ばれない、彼の名前が呼ばれる日はその後来たのだろうか。

個人的にはやはりどうしても『サタンタンゴ』と比較して観てしまった。私は(長さも入ってるかもしれないが)『サタンタンゴ』の方が辛かった。『異端の鳥』は「家に帰る」という目的があるのに対して『サタンタンゴ』は目的が与えてもらえない長い雨季をいたずらに過ぎるのを待つことしかできないという絶望が見事に描かれていた。私はそっちの方が怖いかもしれないな、なんて思ったり。もちろん『異端の鳥』も間違いなく絶望だったけど。私はこの映画大好きです。

エンディング曲がとても美しくて泣いてしまった。ルミドラ役の人が歌っていたんですね……。

 

・星の子

素晴らしい!個人的に大好きな映画だった。

新興宗教という触れづらい題材を取り扱っていながら、それを意外にも爽やかに描いていて、とても良かった。

私は特定の宗教を信じてはいないけれど、新興宗教も信じている人がそれで幸せだと思っているならそれは正解だと私は思っていて、今作はその目線がしっかりと描かれていた。しかしその「幸せ」というものが揺らぐ微妙な機微がとても切なく、劇中に何度も泣いてしまった。

そして何といってもあの終わり方!すごすぎる!素晴らしい!なんて優しくて強い決心なんだろう。なのに押し付けがましくなくて、本当に良かった。びっくりした。かなり好きですこの映画。

 

 

今月は面白い映画ばかりだった。毎月そうだけど。でも観逃した作品もぽつぽつ。そろそろ今年観逃した映画を拾っていくのもやらなくては。1年が早い。

(自分的には)大きな規模の制作がふたつ決定してワクワクと不安が同じくらい。来年の頭には自主の方もやっていきたいな。私はカメラの機材がだんだんと揃ってきて、でも全然使いこなせていなくて、毎日必死にカメラを背負っている。

周りはすごい人たちばっかりで、毎日尊敬と嫉妬の入り混じった変な気持ちになっている。楽しいけどね。私は人に恵まれている。

年末までバタバタ(年始からも大変そうだけど)だから、なんとかやっていきたい。