今月観た映画

みなさんお元気ですか?今月劇場で観た映画の感想です。

 

・街の上で

面白い!今泉力哉最新(?)作。完全にキャリアハイを更新していた。

下北沢に暮らす主人公とそれを取り巻く4人の女性の話。街が舞台なのに部屋の中ばかりなのが、私の東京観とぴったり合っていてとても観やすかった。下北沢の映画なのに、街との距離感が絶妙。これが街だよ!

そしてなんと言ってもイハちゃんの家のシーン。17分テーブル横1フィックス長回し!私なんかがやったらぶん殴られてしまう所業をさらりとやってのける今泉力哉の演出力、セリフ回し、邦画の強みが全てここにある。

パンフも読み応えが抜群。マヒトがEND ROLLを歌ってて最高。古川琴音がかわいい。というかみんなかわいい。

観る価値が絶対にある作品。公開も拡大しているので、みんな観るべし!

 

・JUNK HEAD

面白い!監督が独学で7年かけて、ほぼ1人で作り上げたストップモーションアニメ。見た目はゆるくもハードなスチームパンク

クリーチャーの造形良し、ストーリー良し、ヌケ感良し、さまざま完璧!ここから!というところで終わったと思ったら、3部作の1作目ということで、あと2回はこの世界に浸れるという今後の楽しみができた。

エンドロールが怖すぎる。前に座っていた人が「堀がんばりすぎやろ!堀がんばりすぎやって!」と言っていたのが印象的だった。

 

・僕が跳びはねる理由

東田直樹の同名本が原作のドキュメンタリー。自閉症者が見る世界を画面と音響からなんとか表現しようとしている。

この映画は自閉症を客観的にではなく、あくまで主観的に語っていて、自閉症者の「普通」を知ることができたような気がした。

内容自体は素晴らしいし、劇場体験としても素晴らしいものだが、正直に言うとドキュメンタリー映画としてはどうなのか?と思ってしまった節がある。基本的に5人の自閉症者への密着で映画は進んでいくのだが、その途中に挟まれるイメージ映像のような部分(小さい男の子が歩き回ったりするやつ)がどうも邪魔に感じてしまった。あれが入ることによりどこか劇映画のように感じられてしまい、映画全体がなんとなく軽くなってしまうような気がしてしまう。

NHKの『ドキュランドへようこそ』の枠のような映画だった。何度も言うようだが、内容自体は素晴らしいしとても勉強になるので是非。

 

・椿の庭

写真家の上田義彦の初監督/脚本/撮影作品。さすが写真家なだけあって画がとても美しい。

長い間大事に住んだ家が取り壊されてしまうまでの話。その土地や建物に染み付いた記憶がそれぞれの思い出になるまでを丁寧に描いている。シム・ウンギョンはこの作品が日本での初出演作だったらしいが、さすが素晴らしい演技。私の大好きな『牯嶺街少年殺人事件』のチャン・チェンも出てきてびっくり。

上でも書いた通り、画はとても美しく、ハッとさせられるカットもあるが、いかんせんカメラオペレーションが下手すぎる。自分がそうなので余計気になってしまうところもあるのだが、写真は動きを止めるメディアなのに対して、動画は動きを記録するものであり、被写体を捉え続けるのか、画角内に戻ってくるのを待つのか、というところで迷った挙句、一番気持ちの悪い動きをしてしまう、というカットが散見されてキツかった。やけに長いインサートもつらいものがある。この感じで2時間以上の尺は厳しい。話自体は『おおきな木』みたいな話です。

 

・クリシャ

地獄!今までトレイ・エドワード・シュルツが手を替え品を替え描いてきたテーマは、長編デビュー作で既に描ききっていた!トレイ・エドワード・シュルツの煮凝り!

依存症により子供を手放した過去のある主人公クリシャが、親族一同集まる感謝祭に出席することで、家族が地獄の様相を呈してゆく、最悪のファミリードラマ。

家族の一人一人が波風を立てないように上辺だけの言葉をかけあうあの空気感、みんなで守ってきた仮初の和気藹々をピリッとさせる人のあの感じ、特別な日にみんなで食べる七面鳥があんなに恐ろしく見えるなんて。

しかしやはりデビュー作なだけあって荒削りな感じはした。私は『イット・カムズ・アット・ナイト』が大好き。しかし確実に面白い(面白い?)。映画館が閉まっていく今、公開を決めたユーロスペースに感謝。

 

 

また緊急事態宣言が出てしまい、また劇場が圧迫されている。感染対策を徹底して劇場に通い続けることが一番の支援と抵抗であると日々感じる。しかし続々と映画館が休業に入っていく様を見るととても切なくなる。どうにかならないものか。

みなさんも安全に健やかにお過ごしくださいね。そしてできればでいいので、無理はせずに、劇場に行ってみてください。